蝶が舞う家

私の母がですね、青虫をもらってきたんですよ。
私がに家に着いたら、青虫がカゴの中に入っているわけです。
不気味でしょう。私はああいうの苦手なんですよ。ああいうのって緑色の生物全般。もうダメ。
一体どうしてまたそんなことになってしまったのか、聞いてみたんですよ。
母が言うには、家のインターホンが突然鳴って、通りすがりの人(?)が、「これ、いましたよ」って青虫を差し出してきたんですって。要するに我が家の敷地から出てきた青虫をとってきて、「これお宅のじゃないの?」っていう人がいたんですね。
これ相当変な人ですよね。私は嫌がらせだと思うんですけれども、母親もちょっと困ったけど受け取ったそうなんですね。普通の女の人だったら悲鳴をあげるところだと思うのですが、私の母はそんなことでは動じないのです。
せっかくもらったんだし、ということで育てはじめたということなんですよ。
私も青虫は好きじゃないけど、別に憎いわけではないので、カゴの中にいる分には構わないわけです。たまに覗いて、「ああ、生きてるんだな、頑張れよ」と声をかける程度の関わりなら別にいいわけです。
青虫はやがて蝶になります。蝶になったら嬉しいから育てるのも悪くないっていうわけで母親は育てはじめたわけです。
母が言うには、蝶というのは育った場所に戻ってくるらしいんですね。なので、さなぎから蝶になると、放した蝶がそこをひらひら飛ぶんですよ。うまくいったら、ものすごいお洒落ですよね。蝶が舞っている玄関ですよ。そのへんの金持ちにはできません。

そんなことがあってから、数カ月。
私がドアを開けると、なんと、蝶がひらひら家のドアのところの柱のまわりを飛んでいるんですよね。
「あっ、あのときの……!!」
ちょっと感動しました。

この感覚がなによりお洒落ですよね。