仲がいい人の待ち合わせ

ドラクエⅡの有名なエピソードの中にサマルトリアの王子探しがあります。
悪い神官を倒すべく立ち上がったローレシア城の王子は、まずサマルトリアの王子を仲間にするために出かけるんですね。
ところが、サマルトリア城に着くと王子がいないのです。サマルトリアの王子は勇者の泉の洞窟というところに行ってしまったらしいのです。そこで、勇者の泉の洞窟に行くと、サマルトリアの王子ローレシアの城へ行ってしまったというのです。
こうして、サマルトリアの王子となかなか出会うことができません。
ところで、二人はなぜ出会えないのでしょうか。
それは、二人がまだ知り合っていないからです。
もしこの二人が仲良しであれば、このようなすれ違いはおきなかったでしょう。
仲がいいと、相手の行く場所がなんとなくわかるものです。
例えば、私が友達と会うときは、「ちょっとお茶しない?」ではありません。「いま、あそこいる?」です。帰り道に近くを通ったから、いるなら、お茶をしようという趣旨なのです。
また、別の友達と待ち合わせをしたときに、早く着いたので「着いたら連絡してね」とメールをしてゲームセンターで時間を潰していたら、その人が現れたのです。
「あれ、よくここがわかったね」
「まあ、なんとなく」
逆に会えないこともあります。京都の大学に通う友達が京都から夜行バスで東京にきたのです。前日に9時に待ち合わせと時間だけを決めました。
9時に着いて、しばらく待っても来ないので、「どこにいるの?」とメールをすると、「ゲーセン」。ははあ、あそこかということでそこに行くとやはりいません。
「どこのゲーセンいるの?」
「xxxだよ」
そのゲームセンターが見つからないのです。友達に場所を聞くと、西武の近くにあるらしいのですが、私も西武の近くでうろうろしています。
私が方向オンチとみたのか、向こうが「居る場所を教えてくれたらそっちに行く」とのこと。いる場所も何も私は西武にいるのです。そこで、わかりやすく、Book1st岩波文庫前にしました。ところがこれでも会えない。
「いま、いるけど」
「私もいるよ」
「いや、いないよ?」
「いるんだってば」
ここまで来ると不思議ですね。ここでようやく気付きます。
「……渋谷、だよね?」
「……いや、新宿」
なんと駅が違ったのです。
私とその人はずっと渋谷で遊び続けた仲なのです。
ところが、深夜バスが到着するのは新宿なのです。遊ぶ場所が渋谷というのは、暗黙の了解なので、お互い時間しか決めないのです。
それが徒(あだ)となりました。
仲がいいとこういうこともあるのです。
仲がよければいいほど、待ち合わせのときの情報を省きます。
これが、仲がいいということなのです。

ドラクエⅡの二人は仲がよすぎたのかもしれません。


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