怒りそうなとき

嫌なことがあったときは心にダメージがきますね。
そのダメージは大きく二つに分かれます。まず初動がきます。ドカっと正拳突を叩きこまれたような大ダメージがきます。次に猛毒を受けてるかのように、じわじわと締め付けられます。
猛毒のダメージは自分との戦いです。時が癒してくれるのを待つほかありません。ところが、初動のダメージはそこで潰れてしまうと、後々まで影響してしまう醜態を晒すことにもなりかねません。
例えば、すごく楽しみにしていたイベントがあって、友達から急にドタキャンの連絡が入った。まずその連絡を受けた瞬間に正拳突が叩きこまれます。次に、そのイベントの当日に本当だったら今頃楽しんでいたにな、とじわじわと毒が効いてきます。
ここで大切なのは初動の正拳突に耐えられるかどうかです。初動の正拳突に耐えられないと、どうなるか。本人に文句を言ってしまうんですね。相手もドタキャンをしたくてしているわけではありませんから何らかの事情があるはずなのです。例えば、急に熱が出たというケースでは仕方がありません。ところが怒りのあまり拳を振り上げてしまうと、その拳を叩きつける場所がなくなってしまい、おまけに登場人物が目の前の相手しかいないとなれば、何らかの相手の過失を探しだして叩きつけるほかありません。おまけに、仕方のない理由になればなるほど正面から叩きつけるわけにはいきませんから、言い回しはきわめて嫌味なものになってしまいます。
「――いいよいいよ、私も面倒くさいと思ってたんだ」などと言ってしまうのです。
ですから、初動だけは耐えるのです。いま自分は試されていると思って、初動だけは何をしても耐えるのです。嘘でもいいですから、「えーそうなの〜お大事に〜」と言ってしまいます。考えたり怒ったりするのはその後にするのです。そうすると、優しい言葉をかけた手前、急に「よく考えたら、風邪ひいてんじゃねーよ、てめー。どんだけ楽しみだったと思ってんだよ、このクサレ外道が!」なんて言うのは文脈上おかしいので、失言は避けられます。

怒りそうなとき、初動だけは耐え抜こう。