甘い甘い

イソップ童話の中の短い話にこんなものがあります。
あるところにキツネがいて、美味しそうなぶどうを見つけました。ところがそのぶどうは高いところにあったので、何度かジャンプしたりしてみるものの、とても届きそうにない。そこで、キツネは「あのぶどうはすっぱいに決まっている」と決めつけて帰ってしまいます。そこから転じて、英語でサワーグレープというのは負け惜しみを意味します。
私はよく「人生はお前の考えているほど甘くない」とよく言われますが、それを聞くたびにこの話を思い出します。
人生は一度きりです。食事にたとえるなら1度きりの食事ということです。1度きりの食事がまずいわけがありません。人生は甘いのです。大甘なのです。きちんと歯を磨かないと虫歯になってしまうくらい大甘なのです。
他の人は人生を甘くないといってキツネのように視界から追い出してしまっています。まずいはずの人生をおいしそうに食べている人を見ると、自分も食べたくなってしまうので、「甘くない甘くない」とぶつぶつ唱えて視界から追いやるのです。
そういう人ばっかりですから、おいしいところがたくさん残っています。全部食べてしまいましょう。余った部分は後からやってきた人に分けてあげればいいではありませんか。
私の友人が、大学受験のときに不合格が続き、親に「お前も人生の厳しさを知るいい機会になっただろう」と言われたその翌日に、なんと行きたい学校に合格していたことがありました。
「なかなか人生の厳しさを教えてもらう機会に恵まれないものだなあ」と満面の笑みでその友人。
今度、「人生は甘くない」と言われたら、「人生が甘すぎて虫歯になりそうだよ、わははは」って言ってやりましょう。