カラオケルームが踊りだしてる!

ついこの間、友達と飲みにいって、明け方くらいにカラオケに行ったんですよね。
友達も私もフラフラなので、特に歌を歌うこともなく部屋で転がっていたのですが、そうすると、横の部屋の歌声が少し聞こえてくるわけです。
横はどうも、男性何人かのグループらしくて、野太い歌声が聞こえてきます。
歌声と同時にドスンドスンと地響きのようなものもするのです。ジャンプをしているのかなんなのかよくわかりませんが、物凄い振動が伝わってくるわけです。
盛り上がりも物凄くて、一人がサビらしい箇所を歌うと、続いてバックコーラスのように「うおおお」という声が聞こえてきます。歌い手と聞き手に分かれているのではなく、彼ら全員が一体となってひとつの歌を歌っているかのような盛り上がりです。歌っている歌も、普通です。あまりにも普通なJpopです。嵐だとか郷ひろみとかです。
Jpopというのはpopというくらいですから、みんなが知っている曲です。なるほど、みんなが知っている曲ならたしかに全員が歌い手として参加することができます。
私は隣りの部屋にいるわけですから、彼らがどんな人物で、何人でいるのか、全然わかりません。
全員でひとつの歌を歌っているわけではありません。カラオケはそのものは一般の人がそうするように一人一人順番にまわっていっています。マイクを持っているのは歌い手ただ一人です。
違うのは、聞き手の態度です。聞き手の異様な積極性。間奏の間は物凄い拍手が送られます。曲はまだ終わっていないのに、です。曲が終わればまた拍手です。だから静かな時間が一時もありません。いつも盛り上がっています。
サビの部分を歌うのは一人だけです。AメロもBメロも一人だけです。しかし、歌詞がないその時間は聞き手が歌を歌っています。叫び声をあげています。
隣りの部屋だけが、マリオワールドのように部屋そのものがリズムをとり揺れているような気さえもしてくるのです!

講演やスピーチのコツは聞いてくれている人を見つけることです。
一人くらいは熱心に聞いてくれている人がいるので、その人を見つけてその人に向けて話すのがコツなのです。

ところが、カラオケはそうではありません。普通、テレビ画面の方を向きます。
誰が熱心に聞いていているのかわかりません。誰も聞いていないかもしれません。みんなDSをやっていたり、自分の歌う歌を探していたり、ipodを聴いていたり、英単語を覚えているかもしれません。
不安になります。不安になると歌を歌うのがつまらなくなってきます。つまらなくなってくると、歌を歌うのは苦痛になってきて、1番のサビがおわったくらいで演奏を中止して次の人にまわしてしまいます。

しかし、テレビ画面を見ていても、音は聞こえます。後ろから押し寄せてくる声援を歌い手は聞くことができるのです。
聞き手も、知っている曲でないと、きちんと手拍子をしていても、どこか退屈です。
音楽をただ聴くのであれば、知っている曲よりは知らない曲の方がいいです。しかし、カラオケとなると別です。知らない曲を誰かが歌うのはおもしろくありませんし、知っている曲だとどこか楽しいものです。「音痴め、俺が本物の美川憲一というものを教えてやる」とマイクを横取りしたくなります。

カラオケにおける聞き手は、歌う順番待ちの人であって、基本的には歌いたい人です。
カラオケはクラシックではなくライブです。ライブはみんな立ってジャンプして頭を振ります。
だから、カラオケの聞き手は手拍子をしたり叫び声をあげて、とにかく音を発しなくてはなりません。
バンドのヴォーカルをしてる人は人が歌っていても何か叫んでいます。逆に、にわかのヴォーカルは人の歌なんか少しも聞いてやいません。まだ素人だからヴォーカルという肩書に負けない歌を歌えるか不安で人の歌なんか聞いていられないのです。

カラオケにいったら、部屋がマリオワールドになるくらい盛り上がりましょう。
皆さんの部屋はマリオワールドですか。