情熱を一言で

こないだ一緒に働いてた人がやめることになって、最後に一緒に働く日があったんですね。
仕事が終わる時間になって、ちょっとした世間話を交えながら、これからいいことがあるといいね、なんて話していたんです。
するとおもむろに、その人が、「みのりさん、英語ってどうしたらできるようになりますか?」って聞くんです。もうこの人、帰るんですよ。帰り支度をまとめて、「お世話になりました」って言った後で、ポロっとそんなことを聞くんですね。
英語をどうしたらできるようになるか、教えてほしいから今度、お茶をしようと言われたらいくらでも話すことができます。でも、このときは、明らかに私に与えられた時間30秒もありません。一言しかいえません。
ちょっと考えて、「気になったことは、その場でまめに調べることです」と言いました。もっと時間を与えられれば、もっと気の利いたことが言えたかもしれません。でも、いきなり聞かれると、自分の中に既にあって、自分が本当にそうだと思っていることを言うほかありません。

何かについて熱く話せる人はたくさんいると思います。でもぱっと本質的な質問をされて、一言で答えざるをえないとき、一言で、言いたいことが言えるかというのは普段からどれだけそのテーマについて考えていたかで決まります。
私の答えが彼女の心の中で再び蘇ることがあるのかどうかはわかりませんが、これをきっかけに、一言でエッセンスを凝縮したら、どんな表現になるだろうというのを考えるようにしようかなと思いました。
「映画ってどこがおもしろいの?」とか「本を読むって本当にいいことなのかな?」とか、自分が情熱をもっていることを他人が知っている場合、知的に無垢な子供のように、ラディカルな質問が何気なく発せられることって結構多いと思うんです。
「本が好きなんだって? 本について話してよ」なんて飲み屋でどっしり構えられて聞かれることはあまりありません。それよりもお客さんのいない暇な時間帯の飲食店で、皿を拭きながら雑談しているとうなときに、そのような問いかけは発せられます。
そういうときに、一言で、自分の情熱、歩んできた人生を一言でいえると、素敵だなと思ったのでした。